子どもごっこ
「ハンガリー!」
ドイツの太い叫びが、家の中に広がった。
隣の書斎で書類をまとめていたプロイセンは身体を強ばらせる。彼の弟は今、絶叫した名前の相手と話し合っているはずだ。一体なにがあったというのだろう。
それに、いつも冷静な弟が取り乱すような事態は、たいてい厄介ごとに決まっている。
「どうしたんだよ、ヴェスト」
渋面で隣の応接室をのぞきこむ。驚いた弾みに立ち上がった状態でドイツは固まっていた。その向かいの席にハンガリーの姿はない。
「アイツは?」
きょろきょろすると、茶色がかった金髪が揺れるのが見えた。いるじゃねえか、と思ったのも束の間。鍛えた判断力で、その高さに違和感があることに気づいてしまう。
――なんで、腰の位置に頭があんだよ。
布を引きずる音がいやに響いて、目が合った。
「え、……?」
肩にかかる程度にまで髪が短くなっている。花飾りはない。足元にずり落ちたジャケットやスカートを邪魔そうに蹴飛ばす。きかん気の強そうなしぐさだった。
そこにいたのは間違いなくハンガリーだった。自分を男だと勘違いしていた、はるか昔の幼年期の彼女だった。
「ハンガリー、か?」
ようやく、その問いを口にした。子どもは大きくうなずく。その反動で顔にかかった髪をうっとうしそうにかき上げた。
「ここどこだよ? それに、お前ら誰だ?」
状況についていけない。リモコンがあるなら一時停止したいくらいだ。だが、頭はひたすら早送りされていく。
ドイツもそうなのかと思っていたが、意外にも復帰は早かった。犬三匹を口笛で呼ぶと、彼女と遊ぶように命じる。大きさの変わらない犬と彼女は楽しげに追いかけ回り、まるで四匹いるようだ。
「お、おい、ヴェスト。状況を説明しろ」
「ああ」
話し合っているときは至って普通だったという。だが、終わった直後、いきなり彼女は身体から煙を出した。
そして気がつくとこの状態だったらしい。
「どうやら、今度はハンガリーが子どもに戻ったみたいだな」
「今度は」、というのは、プロイセンもこんな状態になったことがあるからだ。だが、彼にその記憶はなかった。
ただ、酒盛りの翌日に目を覚ましたらハンガリーと一緒に寝ていて、まあその、昨夜は熱い戦いを繰り広げたのだろうと思って再戦を申しこんだらフライパンで殴られた、という奇妙な体験があるだけだ。
正直、二人に担がれているのかと疑っていた。だが、こうして実際に子どもになった彼女を見て、ようやく信じられる気分になった。
「なんでこうなってんだよ?」
「俺が知りたいくらいだ。午前中のEU会議ではなにもなかったんだが」
EU会議のことは聞いていた。なんでも、またイギリスがよっぱらって変な格好(背中には羽根、頭には光る輪っか)をしていたとか。
聞く限り、原因のようなものは特に思いつかなかった。
「兄さんの件から察するに、明日には戻るだろう」
ほっとした。ずっと今のままの姿では国の仕事に色々と支障が出る。今日の仕事はもうないらしいので、あまり影響は出ないはずだ。
「とりあえず、とっととあいつの上司んとこに送り返そうぜ」
「子どもに戻った彼女を連れて行って信じてもらえると思うか? ヘタすれば国際問題だ」
国は引退しているが、それは避けたい事態だった。
「う……じゃあどうすんだよ」
「元の姿に戻るまでここに置くしかないだろう」
「じゃあヴェスト、任せたぜ!」
適当に押しつけて逃げ出そうとすると、がしりと腕をつかまれる。
「前は兄さんがハンガリーに面倒を見てもらったんだ。だから、今度は兄さんが世話をする番だ」
「俺が!?」
目をむくと、大きくうなずかれた。当たり前だ、と顔に書いてある。
「任せた。服は兄さんが子どもになったときのを着せるといい。今から持ってくる」
軽く肩を叩くと、ドイツはそのまま去ってしまう。ただ立ち尽くしていると、騒ぐ声が聞こえてきた。
「やめろよ、くすぐってえな」
犬に頬をべろべろ舐められて彼女はくすぐったそうな顔をしている。わしゃわしゃと頭をなで、追いかけたり追いかけられたり忙しそうだ。
呆然とその光景を見ていると、その視線に気づいてこちらに目を向ける。子どもになっても緑の瞳の強さは健在だった。
「なんだよ。俺になんか用か?」
「俺」が一人称ということは、まだ自分のことを男だと思っていたころまで戻っているようだ。
――それがまあ、よくもあんなナイスバ……じゃなくて、女々しくなったモンだぜ。
ため息をつくと、「辛気くせえなあ」と笑われた。記憶と違わない快活な笑みが懐かしい。こちらまであのころに戻ったようだ。
「なんでもねえよ」
頭をなでると、子ども特有の細くやわらかな髪が指の間をすり抜けた。
長く生きているのだから、子どものあしらい方はそれなりに心得ている。
それに、相手は幼少時をともに過ごしたハンガリーだ。扱いに困ることはなかった。
「家でじっとしてんのもヒマだろ。キャッチボールでもしようぜ」
そう言って着替えた彼女を外に誘い出した。家で暴れまわるとドイツが目くじらを立てる。
「行くぜ」
投げられたボールを受け止め、投げ返す。加減が足りなかったようで、彼女の頭の上を通り越した。走って拾う様子は子犬のしぐさにも似ている。
「大人のくせに力の入れ方も知らねえのかよ!」
見た目だけなら「可愛い」と言ってやらないこともないのに、口を開けばこうだ。救いようがない。
「うるせえ!」
反射的に言い返すと、股間めがけてボールが飛んできた。直撃する直前に慌てて受け止める。
「今のわざとだろ!」
「ちっ、しくじったか……」
「このやろー、俺様の秘技をとくと見やがれ!」
腕をぐるりと回し、遠心力を生かして放り投げる。空気を切り裂いてボールはすっ飛んだ。ガシャン、と軽い音を立てる。
その球を、ハンガリーは鮮やかな身のこなしでかわす。きつく眉をつり上げ、プロイセンをにらんだ。
「殺す気か!」
おびえた様子がどうにも愉快で、腰に手を当てて肩をそびやかした。
「ははは、どうだ! 恐れ入ったか!」
「ちくしょー、なめんなよ! 俺だって本気出しゃあ、あれくらい!」
悔しそうに地団駄を踏むのがまたなんとも言えず楽しい。長生きしてよかった。
「はっ、ガキが。負け惜しみも休み休み言えよ。ケセセセセ!」
高笑いしていたプロイセンだったが、彼女の背後の人影に気づき、表情を強ばらせる。様子が変わったことに気づき、彼女は後ろを振り返った。
「楽しそうだな」
セリフとは裏腹に、ドイツは無表情でボールを握っていた。
「ヴェストも混ざるか……?」
「いや。ところで、割れた鉢植えの隣にこんなものがあったんだが、どういうわけなのか説明してもらえるか?」
しどろもどろになるプロイセンを見て、ハンガリーはあくどい笑みを浮かべる。
「俺、知ってるぜ。あいつが投げたんだ」
「正直者だな。偉いぞ」
ドイツは彼女の頭をなでた。ふふん、と彼女は見せつけるように胸をはった。形勢逆転だ。
「裏切り者!」
「『裏切り者』じゃないだろう! いい大人が子ども相手に本気でなにをやっているんだ!」
もっともすぎて言い返せずにいると、
「マジ怖かった。死ぬかと思った」
ハンガリーはここぞとばかりに猫なで声を出しながらドイツにしがみついた。庇護欲のそそり方を心得ている。子どもに耐性のないドイツはすぐにだまされた。
「鉢植えは片付けてくれ」
「なんで俺が」
彼女の思い通りになるのが気に食わない。逆らってみると、無情な声。
「でないと夕飯抜きだ」
「ちょ、そりゃねえぜヴェスト!」
ドイツに見えないようにして、ハンガリーはプロイセンにあかんべをした。一発殴ってやりたくなったが、弟の目の前でやっては明日の三食まで危うい。ぐっとこらえた。
「自分のしたことは自分で責任を取るのが大人だろう」
どうしてこう、いちいちもっともなことを言うのだろう。
「やりゃいいんだろ、やりゃ」
やさぐれつつ壊れた鉢植えの破片を集めていると、後ろで気配がした。
「お前のせいで割れたんだぜ」
イライラが言葉になる。息を飲む音がした。
ざまあみろ、と内心でつぶやいて手を動かす。そのまま立ち去るかと思っていたが、根をはったように動く様子がない。
それにすらイラつきながら振り返って、ぎょっとする。ハンガリーは今にも泣き出しそうな表情で唇を噛みしめていた。
「その花、枯れるのか」
「え」
小さくやわらかな唇がふるえて、弱々しい言葉をつむぐ。
「俺が、キャッチしなかったから」
ようやく思い出した。今の彼女は子どもだった。皮肉を真に受けたら傷つくのは当たり前だ。罪悪感も強いだろう。
「だ、大丈夫だって! 植え替えればなんともねえから!」
多分、と語尾に付け加えそうになり、口をつぐむ。
園芸は詳しくないが、ここでダメ押しする必要もない。どうにかだまされたらしく、ぱっと顔を輝かせる。子どもは感情の切り替えが早くて助かる。
「本当か?」
その単純さに少しばかり和みながら、土まみれの手で鼻の下をこする。
「ああ。お前がやるか?」
「やる」
小さく丸っこい指が根についた土を払い、別の鉢植えにそっと移す。表面をならし、水をかける。不安そうにこちらを見るのでうなずいてやると、嬉しそうにした。
――デカいときもこうだったらいいんだけどな……。
「なんか言ったか?」
別に、と首を振る。言っても詮(せん)ないことだと、分かっていた。
二人とも汗まみれ泥まみれなので「一緒に風呂入るか」と言って、脱衣所で服を脱ぎ始めるまではよかった、と思う。
問題なのはそこからだ。
「やっぱりお前はちんちん生えてんだな」
悔しそうな声を聞いて、なにかが引っかかった。というか、嫌な予感に近い。
「あーあ、俺のはいつになったら生えんだろ」
――ハンガリーは女だ。
「ちょっと待て、脱ぐな!」
彼女に振り返りながら言うと、衝撃のセリフが耳に入る。
「ああん? なに言ってんだ、もう脱いじまったよ」
半分振り向きかけたまま、固まった。脳みそが今までにないくらいの速さで動きはじめる。稼働の熱で頭がぼんやりする。
「脱いだってことはつまり今は全裸ですっぽんぽんでマッパ、男とは違うあれやそれやがむき出しで、多分この歳じゃパイパ……いやそんなことはどうだっていいんだよ、つーか俺見られてんじゃねえか、うおっ!」
タオルを取って腰に巻く。露出の趣味はない。羞恥や脱力、その他もろもろに襲われ、思わずその場にかがんだ。
「どうしたんだよ。気分が悪いのか?」
「ああ、うん、ちょっとな。ははは」
力なく笑うと、ハンガリーは心配そうに眉を寄せる。全裸で。
顔から下に目をやらないように、目と顔を固定した。見ないのが一番だが、そこまで冷静に判断できない。
「マジかよ……。お前の弟呼んでくるから、ちょっと待ってろ!」
「おい、ハンガリー!」
そのまま出て行こうとするのを慌てて呼び止める。そのままではドイツまで同じ運命だ。
「待てお前、服を着ろ!」
「んなの、かまってられっかよ! 一大事だろ!」
――大人のときもこんな風に俺を気遣ってくれたらいいのに。
その考えはあまりにも空虚で、泣きたくなった。それに、解決するならドイツを呼ぶまでもない。
「お前が服着れば済む話なんだよ……」
「はあ? なに照れてんだよお前。男同士なのに」
違う。違う。だが、なんといって男女の違いを理解させればいいのか分からなかった。
自分のふがいなさが口惜しい。彼女が女だと知ったときも同じことを何べんも考えたが、やはり答えは出なかったのと同じだ。
「お前、『ドーテー』?」
「は!?」
さらに問題発言が飛び出した。もう思考回路はショート寸前だ。
「俺の仲間が前、言ってたぜ。『裸見てうろたえるなんて「ドーテー」だな』って」
「……」
もはやなにも言えない。子どもの無邪気さを罰する法律を作るようにドイツに進言してみよう、そう思った。
夕食のあとは仕事の時間だ。パソコン画面をにらみながらキーボードを叩く。
あれだけ暴れたのだから、もうハンガリーは客用の部屋で眠っているだろう。朝には多分元に戻っているはずだ。戻ってくれないと困る。
――そういや、ハンガリーがうちに泊まんのは初めてかもな。
こんこん、とノックが響いた。ドイツだろう(というかドイツしかいない)と思って入るように言ったが、予想は外れる。
ハンガリーだった。ドアの影からこちらをうかがっている。
「なんだよ、お前まだ寝てねえのか」
ちらりと時計を見た。そろそろ仕事を終える時間であり、子どもが寝るには遅い時間でもある。ファイルを保存してパソコンの電源を落とすと、ひざに彼女が乗った。
「お、おい」
彼女が興味を持ったのは、彼のうろたえるさまではなかった。
「面白いなこの椅子」
勢いをつけて、彼女の座っている彼が座っているオフィスチェアを回す。壁にぶつかる前に動きを止めた。
「もっと動かせよ」
「はいはい」
ぐるぐると椅子を回しながら、一生懸命、大人の彼女に置き換えて想像する。
机に手をつかせて後ろから攻めるとどうなるだろう。ハリのある尻や太ももはさわり心地がいいに違いない。
――プロイセンやめて、なんて涙目で言わせてみてえ。
「すげー」
だが哀しいかな、現実はそうもいかない。あくまで膝の上にいるのは子どものハンガリーで、それは彼の対象外だ。そうでなければ問題である。
しかも、とがった尻の骨が足に刺さって痛い。
嘆いていると、椅子が本棚にぶつかった。本が降ってくる。覆いかぶさってかばう。背中に本の角が当たって痛い。
「大丈夫か?」
「こんなの痛くもなんともない。それより本拾うの手伝え」
落ちた本やら書類やらを集めていると、その中に写真があった。いつ撮ったのかも定かではない、大人のハンガリーの写真だ。
「なに見てんだ?」
ぱっと写真を奪われる。被写体を見ると、にやにや笑った。
「お前のコイビトか?」
「ばっ、ちげえよ!」
――そうだったらいいんだけどな。
むなしく内心で付け足す。
「美人じゃねえか。俺もこんなのがコイビトにほしいぜ」
というか、言っている本人である。なにやらこちらがむずむずしてしまう。
「まあ、頑張れよ。お前、黙ってりゃそこそこのツラしてんだからよ」
「ははは、ありがとよ」
本人に言われても、と微妙な気分になるが、それは仕方ない。悪意はないのだ。そこが厄介なのだが。
「それにしても、細かい絵だな。本物みてえだ」
「だろ? 俺が描いたんだぜ」
「マジで!?」
落ちたものを元に戻し終わり、椅子で遊ぶのはおしまいにした。またなにかにぶつかって壊しでもしたら昼の二の舞だ。
ソファーに座った彼女はやわらかさと弾力に喜び、ジャンプを繰り返す。
「あんまり騒ぐなよ。ヴェストにバレたら大目玉だぜ」
「おう」
ひとしきり跳ねると気が済んだようで、大人しく座る。さすがに眠いのか、目がしょぼしょぼしている。
「お前ってさ、変なヤツだよな」
――言うに事欠いてそれかよ。
「小鳥のようにカッコいい俺様の魅力が分かんねえなんて、ガキだな、お前」
「ばーか」
小さな手で目をこする。多分、眠たいが眠りたくないがために口を動かしているのだろう。
「俺よりガキっぽいところがあるのに、妙に大人っぽかったりして」
「俺様に憧れてんのか?」
「アホか」
すげなく言われた。ショックを受けてなどいない。
「俺、どんな男になるんだろうな」
いや、お前、女だから。そうは思ったがつっこむのはやめた。
「そうだな……」
ぼんやり考え、ひとりごとのようにつぶやく。
「世界一強くなるぜ、きっと。俺なんか簡単にこてんぱんにできるくらい」
「お世辞なんかいらねえよ」
口調が舌足らずで呂律(ろれつ)も回っていない。よほど眠いのだろう。
「マジだって。フライパン振り回して、そりゃあ勇ましいったら」
事実を言ったのだが、彼女は信じない。ふわああ、とあくびをした。
「おい、寝るなら自分のベッドにしろ」
「俺はまだ寝ねーよ……」
しかし語尾は消え入りそうな調子だ。いらぬ意地を張るのはこのころからだったか、と苦笑する。
そのうち、頭を彼のひざにあずけて寝息を立てはじめた。細い肩が上下する。
ベッドに連れて行った方がいいのだろう。だが起こしてしまいそうだ。悩んだ末、このまま夜明かしをすることに決めた。
なにかを忘れている気がしたが、眠い頭で答えは浮かばなかった。
太ももがびりびりしびれる。目を開けないままそこを探ると、髪の渦にふれた。一瞬ぎょっとして眠気が覚めた。
だが、すぐに思い出す。ハンガリーを乗せたまま眠ってしまっていたのだ。その姿を確かめて、硬直した。
ソファーから落ちるほどに長い髪。かすかな隙間から息を吐き出す唇。白い喉から続く身体には、端切れのような服の残骸をまとっている。
彼女は大人に戻っていた。ただし、服まで一緒に大きくなるわけではないので、身体に合わずに破れてしまっている。
いつの時代のパンクファッションだとつっこみたくなるほどぼろぼろで、原始時代のように必要最低限のところしか覆っていない。
――まずい。
このまま目を覚ましたら、以前のようにフライパンを食らうに決まっている。あれはもう二度とごめんだ。
とりあえず自分のシャツを脱ぎ、身体の上にかけてやった。それから頭の下のひざを動かそうとしたのだが、そこが難関だった。
ヘタに動かすと目を覚ます。こうなるくらいなら、昨夜はたたき起こしてでもベッドに寝かせるんだった、と悔やんでも遅い。
ゆっくり頭を持ち上げ、そろりそろりとひざを動かす。かなり時間はかかったが、そのかいはあって、起こさずに退くことができた。
やれやれと立ち上がったそのとき、重石のなくなった太ももに一気に血が流れた。急激な変化はコントロールを奪い、プロイセンをよろめかせる。
足に力が入らなくなり、ソファーに手をついた。クッションが沈み、スプリングがきしむ。
「んぅ……」
ここぞとばかりに環境の変化を敏感にとらえ、ハンガリーはうっすらとまぶたを開ける。
そして、まるで押し倒したかのような体勢でソファーに手をつき、おまけに上半身は裸のプロイセンと目が合った。
「よ、よぉ」
彼女は数回まばたきをした。そのたびに、瞳が焦点を結んでいく。
「お、俺、なにもしてねえからな」
「……この状況で」
すうっと息を吸いこむ音が響く。
「嘘を言うんじゃないわよ、ボケがー!」
いつぞやのデジャヴのように、再び、彼のこめかみにはフライパンが叩きこまれるのだった。
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20000ヒット企画リクエスト「『子ども体験』の子洪+普ver」
09/09/14