内容について



※頒布の際に年齢確認を行っています。イベントでご購入予定の方は、顔写真のついた身分証明書をご持参ください。
スイス×リヒテンシュタインのR18小説です。
リヒテンシュタインが長髪だったころの話ですが兄妹設定です。

スイスに助けてもらったリヒテンシュタインは、そのお礼として性的に奉仕している。だが、だんだん彼女の中でもやもやしたものが大きくなっていく。
――お兄様に、私のことを愛してほしいのです。
自分の本心に気づいた列は、瑞の家を飛び出し……。




サンプル



1(抜粋)


 恩返しのアイディアを探そうと足を運んだ古書店に、道を拓く一冊があった。
 リヒテンシュタインのために書かれたのではないかと思うほど、物語の主人公の境遇は彼女に酷似していた。財産をなくし、三食どころか一食すら危うい少女を、通りすがりの男性が助ける、というものだ。
 少女の感動や男性のやさしさが、リヒテンシュタインにはよく理解できた。当時を思い出し涙ぐんでしまったくらいだ。改めてスイスへの感謝がこみ上げた。
 やがて少女は、リヒテンシュタインと同じく、男性にお礼をしたいと考えるようになる。あれこれと考えるのだが、どれもこれも感謝を表すには物足りなく思えて気に入らない。リヒテンシュタインは深く共感した。
 そして、ついに少女は思いつくのだ。――女として、自分にもできることがある、と。
 少女は男性の寝室に忍びこみ、驚く彼の前で一枚一枚着ているものを脱ぎ去り、裸体を彼の腕に委ね、……。
 形容するものが見つからないほどの衝撃だった。赤裸々な行為の描写ももちろんだが、こんな方法など思いつきもしなかったのだ。
 だが、これ以上のお礼はないと思った。これなら、文字通り、全身全霊で感謝を伝えられる。
 リヒテンシュタインはすぐにその本を購入した。家に帰ってからは何度も何度もその本を読み返した。その手の知識がない彼女にもイメージできるほどリアルな描写をしっかりと覚えこんだ。
 そしてある夜、ついに行動に移した。
 いきなり寝室に現れたリヒテンシュタインに、スイスは驚いたようだった。彼女が服を脱ぎだすと、それは困惑に変わった。
 スイスはリヒテンシュタインを止めた。だが、物語の男性も最初はそうだったので、やめる気にはならなかった。むしろシナリオ通りだと思った。
 生まれたままの姿になったリヒテンシュタインを、スイスは呆然と見つめていた。だがパジャマの股間の布が盛り上がっていた。服の上からおずおずとふれるとやはり抵抗されたが、ずいぶん弱く覇気もなかった。
 初めて目の当たりにした男性器にひるみそうになったが、リヒテンシュタインはそれをくわえた。歯を立ててはいけない、というのは本の知識から知っていた。なめたりこすったり吸ったりすると、スイスはまるで少女のようにあえかな声を漏らした。
 本当はちゃんとした性行為をするつもりだったのだが、スイスは「口だけでよい」と辞した。その代わりに、口で奉仕することが続いている。今夜のように。





2(抜粋)


 家に帰り、さっそく買ってきた本をひらく。
 ……ついに、自分を助けてくれた男性に恩返しを果たした少女。それからというもの、少女は毎晩、彼のベッドにはべるようになる。
 繰り返される秘め事。慣れない感覚に戸惑っていた少女も次第に慣れ、彼が快感を得ていることを幸せに思う。
 だが、夜を重ねれば重ねるほど、少女の心の中には澱(おり)がたまっていく。
 彼がよろこんでくれるのなら自分もうれしい。なぜなら、彼を愛しているから。……それでもう望むことはないはずなのに、心は暗く、鬱(ふさ)ぎこんでしまう。
 ――私と、同じです。
 満たされているはずなのに、どこかにぽっかりと穴があいている。そこから冷たい風が吹きこんで、心全体を冷やしてしまう。
 なにが足りないのだろう。
 どうすればこの空白を埋めることができるのだろう。
『私、本当は、あの方に』
 少女はついに悟る。自分がなにを求めているのか。

『愛してほしいの』

「……」
 リヒテンシュタインは本を取り落とした。
 鼓動が駆ける。頭が真っ白になる。
 ――私は、お兄様に。
 落とした本を拾おうとしたのだが、指先がふるえて何度か空をつかんだ。一度きつく手を握り、無理やりふるえを押しこめて拾い上げた。
 一度深呼吸してから、再び文章を追う。
『愛もないまま身体を求められることがこんなにつらいなんて、どうしてわからなかったのかしら』
 それ以上は読めなかった。
 涙が視界を歪める。本に落ちてページを濡らす。
 自分がつらかったことを、はじめて知った。





3(抜粋)


※この章のみハンガリー視点です


「ねぇ、リヒちゃん。私は今二人の関係を知ったくらいだから、的外れかもしれないけど」
 繊細で傷つきやすい心を逆なでしないように、ハンガリーは慎重に言葉を選びつつ言う。
「私が見る限り、スイス君はちゃんとリヒちゃんのこと、愛してると思うわ。リヒちゃんをなぐさめようと思って嘘をつくんじゃなくて、本当にそう思うの」
「でも……」
 リヒテンシュタインは歯がゆそうに手を握りしめた。
「お兄様は一度も、私を愛していると、おっしゃっていないのです」
 ――そりゃあ、スイス君は簡単にはデレないんじゃないかしら……。
 態度や眼差しよりも言葉の方を重要視してしまう覚束なさがよくも悪くも少女らしい。ひたむきというか、頑固というか。
 フォローのつもりで訊ねてみる。
「でも、ピロートークはしてくれるでしょう?」
 ゆっくりと金色の頭が振られる。
「お兄様は、すぐに身を清めてしまわれて……」
「え? 髪をなでてくれたりとかそういうのは?」
「……ありません」
 ――それじゃあ誤解して当然じゃない!
 男の風上にもおけない態度だ。憐憫と怒りが湧き上がり、ハンガリーは顔をしかめた。しかしリヒテンシュタインはかばうように言う。
「お兄様が悪いのではありません。私がわがままなのです。めぐまれた環境にいながら、これ以上を望むなんて」
「なに言ってるの! そんなの、当然のことじゃない!」
 リヒテンシュタインは目を丸くした。
「片想いは誰だってつらいわ。身体だけなんて、もっともっとつらい。私ならきっと我慢できないもの」
「……」
 金色の眉が痛々しくゆがんだ。双眸がじわりとうるむ。
「リヒちゃんはわがままじゃないわ。スイス君のことがすきだから、そうなるのよ」


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