プロローグ



「一週間、孫のボディーガードをやってくれ」
 入室するなりの言葉に、彼は自分の耳を疑った。
 ここはとある警備会社の最上階にある社長室だ。木目の美しい巨大な机に一人の男が座り、楽な姿勢で座っている。
 この人物は言うまでもなく社長である。背後にある、広く取られた窓から差し込む午後の陽射しは逆光となり、彫りの深い顔立ちを強調している。
 対する彼、ルートヴィッヒは、今年入社したばかりの新入りだった。スーツを着ていても、たくましく引き締まった体つきは隠しようがない。
「私が、ですか」
「そうだ。新米の中でずば抜けて優秀だと聞いている。でなければ可愛い孫を任せられんからな」
 社長の身内を護衛する、これは一種のスターテスだ。自分の身内につける護衛にわざわざ無能な者を選ぶわけがない。有能な者のなかから、さらに優秀な者を選りすぐるのが常だ。
 その上対象は社長が溺愛しているという孫なのだから、これは最上級の評価だと言ってもいい。
「ありがとうございます。……ですが、なぜ一週間なのですか?」
「いつもの奴が私用で一週間穴を開けたんだ」
 要するにつなぎだ。がっかりしたが、それでも評価はされている。そう考えて気を取り直した。
「しっかりやれ」
「はい」
 彼は力強くうなずく。力量を認められた歓喜と使命感で胸がいっぱいだった。


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09/05/10